プチ修行での達成感は、明日を生きる力につながります

宗教学者 正木 晃 AKIRA MASAKI

神奈川県小田原市出身
筑波大学大学院博士課程取得
チベット密教・日本密教研究・日本仏教研究が主な研究課題
慶應義塾大学文学部、立正大学仏教学部非常勤講師、
早稲田大学エクステンションセンター講師
環境教育と少子高齢化にともなう福祉活動、
地域の活性化を目的とした「NPOちんじゅの森」の理事

主な著書
『現代の修験道』(中央公論新社)
『立派な死』(文藝春秋)
『密教的生活のすすめ』
(幻冬舎新書)

自分探しと癒しについて

「自分探し」や「癒し」という言葉をよく耳にするようになったのは、20年くらい前でしょうか。「本当の自分に出会いたい!」「癒されたい!」という欲求は、人間にとって特に若年層にとってはごく自然なものです。少年時代の学びの時期を終え、いざ社会に旅立とうとする時「自分とは何か?」というテーマを前に、思い悩まない人はかえって稀かもしれません。そしてその答えをなかなか見つけられず、期待して始めた仕事や人間関係が思いどおりにいかなくなる時、人は苦しみもだえて心の底から「癒されたい!」と願うのです。

癒される側から癒す側になりましょう

ここで考えていただきたいことがあります。それは「癒し」という言葉が使われる時「癒されたい」というように、受け身の形で表現されることが多い事実です。「誰か私を癒してくれないかな?」。そう思っている人は多いはずです。男女同権とは言っても実際にはそうなっていない日本の現状。若い女性たちが自分探しや仕事、人間関係に疲れ果てて「誰かにすがりたい!癒されたい!」と思ったとしても責められませんよね。でも2400年にも及ぶ仏教の知恵からすると「誰かに癒されたい!」と考えている限りその人は決して癒されません。「自ら癒す」ことこそ本当の「癒し」を得る秘訣。しかも、それができた時に初めて「本当の自分」に出会うことができるのです。

日常から離れることで、心と体をリセットできます

確かに日常的な仕事や人間関係を、今すぐ変えることは無理です。自宅のベッドでごろごろしているようでは、出てくるのは繰り言ばかり。悪くすると、妄想すら湧いてきます。そこでおすすめの方法が、いったん日常的な仕事や人間関係を離れて別の場所から始めること。できれば、自然豊かな環境に身を置いてみることです。その上で、ちょっと体にきついことへトライしてみると良いでしょう。実は人間の心と体は「心身一如」といって、不思議な関係にあります。つまり心が変われば体が変わり、体が変われば心が変わるのです。このメカニズムを利用してきたのが仏教の修行。本格的な修行は無理でも、プチ修行なら誰でも簡単に体験できます。

そっと手を合わせるだけでも修行です

たとえば、自然あふれる山に登ってみましょう。その山が、山梨県にある七面山みたいなパワースポットなら最高です。そして山の中で、樹木や可憐な花々、大きな岩や清らかな川の流れと出会ったらそっと手を合わせてください。後は何もいりません。手を合わせることは「礼拝行」といって相手に敬意を表す立派な修行になっているのですから。もちろん山登りなので体は疲れますが、その疲れは快いはず。なぜなら、心は全然疲れていないからです。ひょっとしたら、心はむしろ弾んでいるかもしれません。そして山頂に立つ時、あなたの心身は達成感でいっぱいになるでしょう。この達成感が「明日を生きる力」につながるのです。

  • 交通アクセス
  • Noboru Masaki 正木昇氏によるプチ修行コラム
  • Katsuhiko Horiuchi 堀内克彦氏による宿坊コラム
  • Q&A お坊さんに質問してみました
  • 身延山めぐり地図
  • お問い合せ 身延町身延山観光協会 TEL 0556-62-0502 身延山久遠寺 TEL 0556-62-1011(代)